September 20, 2017

イラストのちからを感じさせてくれる本

 

牧野富太郎『原色牧野植物大図鑑(北隆館、1996〜1997、改訂版)

雑誌『ku:nel』(2012年 07月号)で、動物記で有名なシートンの描いた絵を見たことがあります。
その見事なこと。
(ネットで「シートン 絵」で画像検索なさってみてください)

以前、実家に帰ったとき、植物学者・牧野富太郎の『原色牧野植物大図鑑』が居間に置いてありました。
合弁花・離弁花編」と「離弁花・単子葉植物編」の2冊。
学校で理科と数学の先生をしている兄の本でした。

開いてみると、植物図のこれまた見事なこと。
しかも量が膨大。

藪内正幸さんの描く動物の絵もですが、そのもの(構造)を知りたいとき、絵は写真を見るよりわかりやすいです。
植物のイラストを描くときにも頼りになる図鑑です。

そこで思い出したのが、松田哲夫さんの『「本」に恋して(新潮社、2006)



編集者としてずっと本づくりに携わってきた松田さんが、製本屋、印刷屋、紙やインクのメーカーといった本づくりの現場を訪ねたルポ。
松田さんがわかりたくて書かれた文章は、知らないことを知った充足感がたっぷり。

松田さんと取材をともにした内澤旬子さんのイラストが、これまた素晴らしい。
印刷の工程を写真で紹介しているガイド本は多いけれど、写真だと、たとえば「現物の印刷機はこういうものらしい」とスーッと受け取って見過ごしてしまいがちなところを、イラストだと、「ここはこうなっているのか」と順を追って眺められるよさがあります。

写真を多用した印刷ガイド本と違って、読むガイドブックといった感じ。
文字好きの方にぴったりです。

イラストって、(広い意味で)図解のことなのだと、牧野の植物図鑑、藪内さんの動物画、内澤さんのルポイラストを見ていて、はたと思い起こされます。

イラストの力・役割を感じます。